2017.09.07 大原青子先生インタビュー①
モンテッソーリ教育Q&A


モンテッソーリ教育」とは、どのような教育なのでしょうか。

 

0-3歳のモンテッソーリ教育のスペシャリスト大原青子先生に伺いました。

 

大原青子先生 プロフィール

社会福祉法人香楠会エミール保育園 園長

AMI(国際モンテッソーリ協会)認定 准教師養成トレーナー(0-3歳レベル)

久留米信愛女学院短期大学 幼児教育学科 非常勤講師

慶應義塾大学文学部哲学科卒、福岡教育大学修士課程修了M Ed取得

AMIパリコースにて幼児(3-6歳)レベルの国際教師資格取得

AMIデンバーコースにて乳児(0-3歳)レベルの国際教師資格取得

 

 

 

モンテッソーリ教育の特徴

まず初めに「モンテッソーリ教育」とは、一言で言うとどんな教育なのでしょうか。

 

「一番大きな特徴は、『子どもが自分でする活動を自分で選ぶ』という所です。これが従来の教育法との一番の違いです。」

 

(エミール子どもの家 乳児クラスより)

 

– その最終目的というのは「自立」なんですか?

 

「自立は一部でしかないと思います。自立するということは、その他の全てに繋がるために大事なのですが、それよりも次の事が大切です。

 

 

モンテッソーリ教育の目的

・幸せな人間に成長すること

・他人と共存できる人になること

・この世界へ貢献できる人になること

 

そしてそれが最終的には、『平和』という大きな目的へと繋がっているのだと思います。」

 

– 「今現在の目先のことをできるようにする」というわけではなく、もっと先の「生涯に渡っての人格を作る」という大きな目的があるのですね。

 

 

 

モンテッソーリ教育への疑問

– また、園を選ぶ際に「モンテッソーリ教育は、外遊びはしないのですか」「集団に馴染めるんですか」「向き不向きがあるのでは」などという疑問がある方がいると思います。そういう側面はあるのでしょうか。

 

一つずつお伺いしましたので、Q&A形式でご紹介いたします。

 

Q「外遊びがない?

A 「外遊びについては、モンテッソーリ自身も昔から重要視している所です。室内活動だけではなく『ただ外で遊ぶ』ということも、子どもにとって勿論大切なのです。

 

外の運動場で遊ぶような遊び…例えばジャングルジムやブランコなどを園庭に取り入れ、粗大運動(=大きな筋肉を使う運動)ができる遊びの機会を与えることを、モンテッソーリ自身もとても大切に考えていました。

 

一説では、ジャングルジムもモンテッソーリが考案したと言われています。

 

(エミール保育園:3歳以下の子ども専用の園庭)

 

それに加えて『外でのお仕事』も重要です。

 

例えば、100年前のモンテッソーリの著書にも『子どもたちにはガーデニングがすごく良い』と書かれています。

 

(エミール保育園 乳児クラスより)

 

だから外での仕事を、本来はものすごく重要視しているのです。『中での仕事と同じぐらい重要です』とはっきりと言っています。

 

モンテッソーリ教育は、教具や教材などが豊富にあり、室内の活動が充実しているために、部屋の中で活動をするのがメインのように感じてしまいがちです。

 

でも恐らく理想的な園には、クラスの横に小さな庭などが併設され、そこで外の活動ができるようになっていると思います。そして、中での活動も外での活動も同じように行うのです。」

 

– 室内で一日中手先のことを静かにやっている訳ではない、ということですね。

 

 

Q「集団に馴染めなくなるのでは?

A 「はっきり言って『こんなに集団に馴染めるようになる教育はない』と思います。」

 

– それは、どういうことなのでしょうか?

 

「社会に出た時の一般的な『集団』は、“色々な人の集まり”をさす時に使います。ですから、異年齢で、人種もさまざまで、色々なバックグラウンドの人が集まっているのが『普通の集団』です。

 

それに対して、『学校の集団』とは何を指すのでしょうか。

 

よく言われるのが『一斉の学校のクラスに馴染めないのではないか』とか『一緒に皆で同じことをするのに、一人だけ馴染めないのではないか』ということ。

 

 

それは「その学校の同じ年の人しかいなくて、同じことを全員でやらなくてはならないとき、それに合わせられるか」と言う心配です。

 

しかし、実際に社会では、そんな状況に置かれる方がずっとずっと稀なことです。はっきり言って、社会の中ではそんな集団はありません。

 

ですから、同じ年の人しかいなくて、全員が一斉に同じことをしなくてはいけない、という『学校の集団』というのが人工的で、普通の社会ではまずあり得ない形です。

 

だから、そんな所で育っても、社会に出た時に『本当の集団生活』が、逆に営めないのではないでしょうか。例えば、年上の人と話したことがないとか、みんなで同じことをやらされて評価付けられることには慣れていても、自ら考えたり、できない人を助けてあげたりできないとか。

 

ですが、モンテッソーリのクラスの中には、色んな人が居て、異年齢で、それぞれが色んなことをやっているからこそ、みんなで思いやり合わないと集団として成り立たないのです。

 

(アメリカ、Montessori International Academyの3-6歳のクラスの様子。

異なる人種、年齢の子ども達が、一つのクラスで集中して活動。)

 

ですから、その秩序を保てるような子どもたちが、同じ年齢で同じ能力の人しかいないような集団の中で、しかも指示に従うだけで良いような活動をすることは、実はとても簡単です。内心はきっと嫌でしょうけど。

 

だからモンテッソーリ教育のような、異年齢で成り立っているクラスで過ごすことこそが、本当の意味での集団に適応できる子どもが育つ上で大切なのだと感じています。』

 

– モンテッソーリ園で育った子どもは、小学校入学後、先生に「止めなさい」と言われても「一人だけ活動が終わるまではやり続けてしまうのでは」とか、「一人だけ皆と違う好きなことをやってしまうのではないか」とか・・・そういうイメージから来る疑問なのでしょうね。

 

「今小学生の自分の子どもを含め、周りにたくさんのモンテッソーリ園の卒園児がいますが、そんなことはほぼ聞いたことがありません。

 

『モンテッソーリで育ったから指示通り出来ない』なんて言うのは有り得ないです。なぜかと言うと、彼らにとっては、誰かから指示されたことをやるなんてもちろんできるし、簡単なことなのです。モンテッソーリで育った子どもは、指示がないときでさえも、自分で考えて動ける人たち『指示が何もなくても自ら考えて動ける子どもになる』という風に捉えた方がよいと思います。』

 

(エミール子どもの家 乳児クラスより)

 

– 自ら考えて動ける人たち、今すごく求められていますよね。大人でも。企業も『“自ら考えて動ける人“たちを作る為にどうしようか』などと言って、入社後にプログラムを考えたりしている所もあるみたいですが、『昔からこんなに良いものがあるのに!』という風に思います。

 

「そう。『モンテッソーリ』という名前がついているため、残念ながら先入観で誤解されたり敬遠されたりしてしまうこともあるかも知れませんが、中身だけよく検証してもらったら、こんなに良いものはないと思います。」

 

 

Q「向き不向きがあるの?

-「向き不向き」に関しては、どうでしょうか。例えば「大人しい子や女の子に向いてる教育では」と、思われる方もいらっしゃいますが。

 

A 「それも全くの誤解です。例えばモンテッソーリのクラスを見て、皆が大人しく活動しているように見えたら『大人しい子に向いているな』と思ったり、『自分で好きなことが出来る』ってことだけ聞いて、『うちの子は我が強いから向いてる』とか、『自分のやりたいことしかやらないから向いてる』などと感じたとします。

 

(エミール子どもの家 乳児クラスより)

 

ですが残念ながら、それは一部一部を切り取って見てしまっているだけなのです。

 

一つだけ大きい特徴をあげるとすると、先ほどお伝えした『自由選択』なのですが、はっきり言って、モンテッソーリ教育ほどこんなに全てのものが網羅されている教育はありません。それ程全ての要素が入っていて、バランスが取れてる教育なのです。一つのことに特化していて、一つが極めて目立つような教育法ではないのです。

 

まずは生活に根付いた『日常生活の練習』という、誰でも皆がやっているようなことが基礎にあり、その上で、例えば芸術もあるし、音楽もあるし、数もあるし、言語もある、というように、全ての分野が網羅されています。

 

(エミール保育園 乳児クラスより)

 

では、お勉強の要素だけが強くあるのかと思うと、とても自然派だし、自然派かと思うと、すごく知的なこともやったりする…というように、ある一面が優れていると思うと、同時にその反対側もあるのです。

 

しかも向き不向きがあるどころか、世界中全ての子どもの為のものです。世界中どんな国のどんな文化の、どんな性格の子でも、その子のキャラクター以前に持っている『子どもに共通の普遍的なもの』に適した環境が用意されているのです。

 

– 向き不向きは無く、むしろどの子にも万能なのですね。

 

 

 

「常に自分で考える」子どもが育つ

「そしてどの子も皆、自らやりたいと思う興味があることをやれるのです。『自由選択』の『選ぶ』ということがどう言うことかと言うと、『常に自分で考える』ということなんです。

 

(エミール子どもの家 乳児クラスより)

 

モンテッソーリ園の子どもたちは、朝、園に来て、まずは『何しようかな』と考えます。『あれをしようかな。でもあれは先に誰かにやられちゃっていたから、こっちにしようかな。あ、こっちだったら前にもやったことあるからできるな。でも、この横にあるこれも結構おもしろかったな…。どっちにしようかな、今日は。じゃあ今日はこっちのにしよう!』って、朝から自分でずっと考えているのです。

 

それに比べて、例えば一斉教育の現場だったら、朝一から先生が『はーい!ここに並んで!今日はお絵描きする日だよ。みんなはここで待っててね―!』・・・となります。何も自分から動いちゃダメよ!というメッセージです。全く考えることなく、受け身、受け身。受け身な脳の回路ができてしまうと思います。」

 

– 楽ですよね、大人でもその方が…。

 

「でもモンテッソーリのクラスだったら、子どもが『先生、今日は何するのですか?』と聞いたら、先生に『え?自分のやりたいことをしていいよ。何がしたい?』って切り返されます。子どもは『う~ん、僕は何しようかな?』って考えなきゃならない。だからいつでも『考える』ことをしなきゃいけない。

 

これは例え、もしどんなに、その園のモンテッソーリの環境が、まだまだ整っておらず完璧ではなかったとしても…やっぱり少しでも「考える時間」を与えられるという所で、他とは大きく違うと思うのです。』

 

– 大原青子先生、たくさんの疑問・質問にお答えいただき、ありがとうございました。

 

次回は、「モンテッソーリ園を選ぶ際の大事なポイント」をお伺いします。

 

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