2019.04.11 お弁当から考える、家庭の役割 / 台湾 梅先生インタビュー (養老孟司先生への未公開インタビュー有)


台湾の台北市では、約45年の伝統のあるモンテッソーリ教育。中でもモンテッソーリ幼稚園『童圓』は、35年の歴史のある園です。

 

設立者の梅先生にお話を伺いました。

 

 

梅先生とあべようこ

(左:梅瑞雲先生 右:あべようこ)

 

梅瑞雲 先生

台湾の台北市にあるモンテッソーリ幼稚園『童圓(蒙特梭利童圓幼児園)』創立者。0-6歳レベルのAMI教師(国際モンテッソーリ協会認定)資格取得。3-6歳のトレーナーは、マリア・モンテッソーリの愛弟子だった、イタリア人のパオリーニ先生。30年以上台北でモンテッソーリ教育を実践してきた、台湾でのモンテッソーリ教育パイオニア的存在。

 

(取材、文 あべようこ)

 

 

台湾のモンテッソーリの先生に求められることとは?

 

あべ

– 台湾のモンテッソーリ教育は、どんな風に変化してきましたか?

 

梅先生

「これまで何十年、園の子供たちと保護者の方々をしっかりと育てていければ良いと思ってやってきました。台湾全体で見ると、以前よりもモンテッソーリ教育が求められています。そのニーズによって、モンテッソーリ教育を勉強する先生も増えていると思います。先生はモンテッソーリ教育の理論や教具の扱い方の理解は勿論ですが、『理念』を持たなくてはいけないと思います。」

 

あべ

– 「理念」とは、どういうことでしょうか?

 

梅先生

「例えば台湾では、学校・先生は保護者の言いなりになりがちです。でも、保護者の言いなりになってはいけないと思いますそれをこれから「お弁当」を例にとってご説明します。」

 

華やかな弁当

 

 

台湾で唯一のお弁当持参園

梅先生

「台湾の園は、一般的に給食です。台湾全土で見ても、ここは唯一のお弁当持参の幼稚園だと思います。ここでは、保護者の方々がどんなに求めても給食にせず、あえて家庭からお弁当を持参することを必須にしています。」

 

あべ

– 「給食ではなくてお弁当が必須?その理由はなんですか?」

 

 

もう一つのメッセージ

梅先生

「台湾では、若い保護者たちが外食しがちなんです。お弁当を持参にするのは、外食ではなく、『自分の家でご飯を作ってね!』というメッセージでもあります。

 

晩飯の残ったおかずを翌日のお弁当にすることも多いですよね。お弁当があると、外食ではなく晩御飯を家で食べる必要が出てくるので、それもねらっています。食卓を囲んで皆で晩御飯を一緒に食べるというこの機会につながり、それはとても大事な家庭の概念だと思います。子どもは、お弁当を食べて『母親の味だ』『家の味だと』覚えてます。外から来たお弁当ではなくて、『家庭の味だ!』という体験です。」

 

食卓を囲む台湾人家族

 

 

お弁当による子供へのメリット

食材の変化

梅先生

「また、子供に“食材の変化”を示すことができます。切り方も、“みじん切り”、“細切り”、“四角く切る”などの違いを見て、『あれ?お友達のお弁当には、違う切り方で入っているな。』と、見て感じることができます。」

 

 

知識と話題

梅先生

「切り方だけではありません。『私のお弁当はラーメンだな』』あの子はご飯だな』『あの子はビーフンだな』『あの友達は、何を食べているの?』などと気が付くことで、それが話題の一つとなっていきます。違いを見て知識を増やすこともできます。食べ物の知識は時間をかけて増やしていくものなんです。同じ給食をシェアして食べることが良いと考える方もいるかも知れませんが、これもシェア(物理的な食べ物ではないけれど、知識や体験を分ける)という概念の一つだと思います。」

 


楽しい昼食のイメージ

 

 

手抜きお弁当への対処

あべ

– メニュー、食材、切り方の変化を知るというお弁当のメリットを伺ってきましたが、明らかに手抜きしているお弁当があったらどうしますか?白いご飯と、チーズとウィンナーだけなど・・・。

 

梅先生

「親に電話します!! (笑) また、3日間同じお弁当の内容だった時も親に相談します。『お子様がかわいそうですよ。毎日同じ内容のお弁当なので、他のお子様からどうして毎日同じおかずなの?と聞かれていますよ』などと伝えることもあります(笑) 年の功もあり、このやり方でずっとうまくいっています。」

 

台北童圓での取材の様子

(取材の様子)

 

あべ

– 親と園の関係性といえば、以前日本で有名な学者の養老孟司先生への取材時にも、同じようなお話をお伺いしました。(以下でご紹介いたします。)

 

養老孟司先生

解剖学者。東京大学医学部卒。東京大学名誉教授。『バカの壁』『遺言。』(新潮新書)など著書多数。『バカの壁』は、これまでに400万部を超えるベストセラー。

 

(左:養老孟司氏 右:あべようこ 2017年取材時)

 

あべ

– 養老先生でしたら、子供たちのためにどんな保育園をお作りになりますか。

 

養老先生

「保育園はねえ、悩みます。どうしてかと言うと、保育園は常に親と矛盾する存在。理想的な保育園をつくると、親がいらないんです。保育園って、まさに親そのものを意味しているんですよ。でも皆そう思っていないんだよね。そりゃ、自分の子供ですから、自分が親なのは当たり前、とこう思っているんだけど…。

 

長年保育園の理事をやっていたから、初めは『良い保育園とは?』と真面目に考えようともしました。でも『本当に良い保育園つくると、親がいらなくなるな』と思ったんです。

 

保育園と親は緊張関係になくてはいけない。親は何をして、保育園は何をするか?保育園に預ける人は本気で考えなくてはいけない。」

 

養老孟司先生へのインタビューの様子

(インタビューの様子)

 

あべ

「待機児童もあり、まず保育園に入れるか入れないか、ということが問題になっていると思いますが。」

 

養老先生

「入れればいいというものではなく、『親とは何だ?保育園とは何だ?』って、日常的に考えなくてはいけないと思います。『保育園はここまでやるから、親御さんここまでやってくださいねと言えるのが、一番健康な状態に近いと思うんだけど。

 

そう考えるのに至ったのには、いくつも例がありました。例えばある保育園で『お弁当の時間』というのを月に一回作ってみたんです。その園は社会福祉法人だから、普段は給食なんですが、親御さんにお弁当を作らせて、みんなで家庭から持ってきた違うものを食べるという日を月に1回つくってみました。そうしたら、親から市役所に『全日給食にしてください』というクレームが行って、市から改善指示が来たんです。間をとって、『お弁当の日を2月に一回にしてください』と。給食は、たしかに忙しい親にとっては助かるんですよ。

 

でも、その裏で『親とは何だ』という問題が生じていると思うんです。」

 

(2017年 取材 あべようこ)

 

 

梅先生

「(以上の説明を聞いて)その通りです。親が子どもを生んだので、本来子どもを育てる責任と義務があります。当たり前の事ですが、それを忘れてほしくない。お弁当はその一つの例です。親は『子供を幼稚園や学校に預けたら、もうそれでおしまい!』と思ってほしくないんです。お弁当持参の真の意図は、親に『家庭』という概念を持ってもらうため

 

どんなに親に給食がいいと言われても、それは譲れない理念です。親の言いなりになるのではなく、親と学校で一緒に、協力しあって、子どもを大事に育てていきたいからです。

 

 

 

梅先生、童圓の先生方、スタッフ様、貴重なお時間頂き本当にありがとうございました!

 

蒙特梭利童圓幼兒園スタッフとあべようこ

(童圓の先生方と)

 

蒙特梭利童圓幼兒園

住所:No. 54之1號, Section 2, Jinan Road, Zhongzheng District, Taipei City, 100

電話: 02 2395 7517

 

 

 

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