2018.04.12 炭川純代先生インタビュー①
アメリカでモンテッソーリ教師として働く


アメリカは、「世界一モンテッソーリ教育が盛んな国」といわれています。「モンテッソーリ」という言葉が特別なものではなく、一般的に広く知られているようです。

 

そんなアメリカに20代で単身渡り、現地でモンテッソーリ教師のトレーニングを受け、モンテッソーリ園で経験を積み、さらには自分で大きなモンテッソーリスクールを開園した、日本人モンテッソーリ教師がいます。

 

アメリカのサンタアナにあるモンテッソーリ国際学園(Montessori International Academy)の創立者であり、ディレクターの炭川純代先生にお話を伺いました。

 

 

炭川純代(すみかわすみよ)先生  プロフィール

 

アメリカ、サンタアナにある「モンテッソーリ国際学園(Montessori International Academy)」創立者。モンテッソーリ国際学園初等科プログラムのディレクター。

American Montessori Society (AMS) 認定の幼児及び小学部の資格取得。Casa Montessori School に7年間勤務(3-6歳児のクラス担任)後、2003年 University of California Los Angeles、で心理学学士号取得、2009年College of St. Catherineにて教育学の修士号取得。公益財団日本モンテッソーリ綜合研究所研究員。カサ・モンテッソーリスクール(ノースリッジ・ロサンゼルス)役員。

 

 

 

最初の渡米

– 炭川先生はアメリカで生まれ育ったわけではなく、元々日本に生まれて北海道の幼稚園に勤務されていたそうですね。何故、こうしてアメリカでモンテッソーリスクールを開園することになったのでしょうか?まずその経緯をお伺いできますか。

 

「私は、日本の幼稚園で5年間働いていました。モンテッソーリ教育の実践園だったために資格を取る必要があり、日本モンテッソーリ教育綜合研究所でモンテッソーリ教育を学びました。

 

そして園での勤務も5年目となり、将来を考えたとき、アメリカでモンテッソーリ教育が大変盛んだということを知りました。そしてまずロサンゼルスに来て色々調べたんです。だけど、どこにも私を勉強させてくれるような所はありませんでした。」

 

– 当時は今のようにメールやインターネットもない時代ですから、まずは現地に足を運んだわけですね。

 

(炭川先生が2010年に開園した、モンテッソーリ国際学園の3-6歳クラス。)

 

「まずアメリカに住む友達を訪ねて、彼女に手伝ってもらいながら、職を探しました。近くのモンテッソーリの学校を訪ねて直接『私たちを雇ってもらえますか?』と聞いてみたり。でも『ビザもないのに・・・』と断られたりしていました。」

 

– それで、どうされたんでしょうか?

 

「『どうしたら良いんだろう?』と、ひとまず日本に帰ってきました。そこで、アメリカでモンテッソーリ教育を学ばれた、松浦公紀先生(日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成センター主任実践講師)に相談をしたら、『それは良いことだ!じゃあ勉強できる所を紹介するから、ぜひ頑張って行って来てください。』と仰って、留学先を紹介していただけました。」

 

(2016年にオープンした、モンテッソーリ国際学園の小学部クラス。)

 

 

 

「アメリカン・モンテッソーリ協会(AMS:American Montessori Society)」での教師トレーニング

– では、いきなりアメリカで働くのではなく、まずはモンテッソーリ教師のトレーニングを受けられたんですね。

 

「そうです。それで松浦先生に『バッファローとテキサスがあるけど、どっちが良い?』と聞かれたんですが、その時にバッファローはニューヨーク州と聞いたので、『あ、あのニューヨークだ!』と思って、ニューヨーク州を選びました。しかし実際はバッファローはすごく田舎で、寒くて、ナイアガラの滝がある所なので、全然都会ではなかったんです。後で『何てことだ!』って思いました(笑)

 

でもそこで、1年間教育実習しながら過ごしました。」

 

– ビザを取れたんですか?

 

「バッファローで滞在していた先が、公立の学校のプログラム・コーディネーターだったので、役所などにも足を運んで取得できるように応援して下さったんです。そして松浦先生やトレーニングセンターの人たちもすごく協力して下さって、やっとのことで学生ビザを取ってくれました。」

 

– F1(学生ビザ)だったんですか?

 

「そう、F1(学生ビザ)でした。それを取るのに松浦先生をはじめモンテッソーリ関係の人がすごく助けてくれていたことが後で分かって、とても感謝しました。そんな形で皆に助けられ、まずアメリカに渡ったんです。」

 

– ではトレーニングと教育実習で、まずは1年間いらっしゃったんですか?

 

「そうです。『アメリカン・モンテッソーリ協会(AMS:American Montessori Society)(以下、AMS)』のトレーニングコースです。夏の2か月間、朝から夕方までビッチリ勉強をしました。そしてその後1年間、実際に子どもと関わって教育実習をして、最後にテストをして、受かったらディプロマをもらえるというスタイルなんです。」

 

– 教育実習の後はどうされたんでしょうか?

 

「トレーニングを受けて、教育実習もして、あっという間に1年過ぎてしまいました。でも、このままだと全然身に付いてないから、もっと学びたいと感じました。

 

それで今度はエレメンタリー(小学生)のモンテッソーリ教師のトレーニングを受けようと思って、サンフランシスコの『サンフランシスコ・ベイエリア・モンテッソーリスクール教師養成センター』に行き、エレメンタリーのトレーニングを受けたんです。」

 

(モンテッソーリ国際学園の小学部クラス)

 

 

 

ロング(Sakura Minowa Long)先生との出会い

「そうやってエレメンタリーのトレーニングを取った後『でも、教育実習をどうしよう?』と思いました。なぜなら、英語があまり喋れないアジア人の実習生を取ってくれるエレメンタリーの学校は、なかなか無いと思ったからです。

 

でも、その時に出会ったトレーニングセンターの方が『私、日本人のモンテッソーリ教師を知っているよ。うちの息子が日本人の先生がやっているモンテッソーリの学校に通っていたから!』と、後に大変世話になる、アメリカで『カサ・モンテッソーリスクール』を運営する日本人のモンテッソーリの先生『ロング 蓑輪 佐久良(Ms.Sakura Minowa Long):通称さくら先生』のことを教えてくれたんです。」

 

– さくら先生とそこで出会われたわけですね。すんなり受け入れてもらえたのでしょうか?

 

「ところがね、さくら先生に連絡してみると、『あー、うちは先生がもう一杯いてね。新しく先生を取れないのよ』と、一度断られてしまいました。

 

でも、その後また電話が掛かってきて、『とりあえず来てみる?』と言われたんです。そしてとりあえず行って会ってみたら、雇ってくれることになりました(笑)」

 

– その時はどういうビザだったんですか?ビザのことばかり聞いてしまってすみません。日本人が海外で働く時に、とにかくビザが問題になることが多いようですので、参考のために。

 

「アメリカン・モンテッソーリ協会(AMS:American Montessori Society)のトレーニングセンターでモンテッソーリ教師のトレーニングを受けると、最初は学生ビザ(F1)で学んだ後、OPT(Optional Practical Training)という『カリキュラム・トレーニング・ビザ』が降りるため、そのままアメリカで1年間の教育実習を有給でできるんです。」

 

– トレーニングとして働くことができたのですね。日本人のさくら先生が、経営されるモンテッソーリの学校「カサ・モンテッソーリスクール」ではいかがでしたか?

 

 

「カリフォルニアのノースリッジという場所にありました。そこからもらえるお給料も、学生のトレーニング用のビザ・OPTですから、たいしていただけるわけじゃなかったのですが、それでも『ありがたいな』と、つくづく思いました。バッファローの時は、1年間無給で働いていたんです。」

 

– 1年間、完全に教育実習としてですか?

 

「そうです。だからカリフォルニアに来て車も買ったし、それまでの貯金も親から借りたお金も全部なくなったりと、とても大変だったんです。

 

それで、カサ・モンテッソーリスクールで1年間一生懸命働いて、その最中に『就労ビザを申請してもらえませんか?どんなことでもするので、お願いします!』とお願いしたんです。すると快く『OK』と言ってくれたんです 。」

 

(炭川先生と恩師のさくら先生)

 

 

就労ビザの取得

「そして、H1ビザという就労できるビザを申請しながら、グリーンカード(永住権)も申請していました。弁護士のお金もすごくかかったし、その為にアルバイトしなければならなかったりとか、色々苦労もありました。」

 

– でも、最終的にH1ビザを取れたんですね?

 

「はい。その当時は、H1ビザは3ヶ月ぐらいで取れました。その後グリーンカードは、4年半かかって取れたんです。」

 

– H1ビザで4年も働けたんですか?

 

「働けたんです。H1ビザは延長も効くから、7年や6年働いても良かったんです。カサ・モンテッソーリスクールの小学校3~5年生のクラスで働かせてもらいました。

 

その後、園長先生に『幼稚園の3-6歳のクラスを持ってみなさい。英語が不安でも、That’s OK !!』と言っていただき、3-6歳も持たせてもらえました。」

 

– それで、さくら先生の所では何年位勤務されていたんですか?

 

「さくら先生の所では、7年続けて働いて、その後に大学に入学して学生に戻ったりもしたんですが、時々パートタイムで手伝ったりとかしながら続けていました。」

 

(モンテッソーリ国際学園の3-6歳クラスの様子)

 

「そして、退職してUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)College of St. Catherine(セント・キャサリン・ユニバーシティ)で勉強をしました。」

 

 

 

アメリカで大学へ入学

– 長年現場で子どもを教えられた後に、なぜまた大学に入って学ぼうと思ったんですか?

 

「それはクラスを持っていると『ああ、このままの知識じゃダメだ!』と感じたためです。

 

やはり幼児教育は、まず先生自身が色々なことを知らなければならないと思ったんです特にアメリカでは、一般教養がないとなかなか難しいんです。例えば、地理や科学等の知識も求められるので、やっぱりきちんと勉強しなきゃいけないなと思ったんです。」

 

 

 

炭川先生が、渡米され、試行錯誤をしながら経験を積まれて、アメリカの大学で学ばれるまでをお伺いしました。次回は、先生がいよいよ「モンテッソーリ国際学園」を開くまでの経緯をお伺いします。

 

 

 

 

お知らせ

 

現在、炭川先生がディレクターを務める「モンテッソーリ国際学園」では、先生の募集を行っております。こちらも是非ご覧下さい。

 

 


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