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イデー・モンテッソーリ/モンテッソーリ教育を愛する全ての人へ

2017.06.15 相良敦子先生インタビュー③
モンテッソーリ教育を受けた子どもとは


モンテッソーリ教育で育った子どもは、実際にどんな大人になるのでしょう。

 

最近では、将棋の世界で大活躍中の藤井聡太さんがモンテッソーリ教育を受けていた、ということが話題になっています。

 

相良敦子先生は、2009年に出版された著書の『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち」(河出書房新社)の中で、子ども達がどのように成長していったかを、詳しく紹介されていらっしゃいます。

 

 

その著書に関するお話を伺ってみました。

 

「あの本を書く前に、子どもたちの成長のデータが1000人分ぐらい手元にあったのです。どうやったら、そのデータを客観的に納得してもらえるように紹介できるか。それを考えていました。私は、1986年に出版した、『モンテッソーリからモンテッソーリを超えて』(相川書房)の中に、モンテッソーリ教育を受けた子の共通点を10項目書いていました。」

 

 

 

  1. 順序をたてて、ものごとを考えることができる。
  2. 何をするにも、計画を立て、順序を踏んで、着実に実行する。
  3. 段取りがよい。
  4. 先を見通すことができる。
  5. 一から出発する。
  6. 省略をしない。(ただし、急ぐときに、どこを省略すればよいか、ポイントがわかる。)
  7. 状況の読み取りが速く、機転がきく
  8. わずかな差異に気づき、道徳性が高い。
  9. 一人でもたじろがない。責任ある行動ができる。
  10. 礼儀正しい。本質に対して忠実。
(モンテッソーリ教育を受けた子供達に小学校以降に現れた特徴の聞き取り調査をしてまとめたもの)

 

 

 

モンテッソーリ教育を受けた子ども達は、前頭葉が育っている

ここから相良先生のお話は、モンテッソーリで育った子どもの特徴から、脳の研究へと移ります。

 

「あの本を書いたのは、1986年です。それから10年以上経った1990年代、脳科学の分野で一気に脳の研究が進んできました。それで、交通事故や脳腫瘍、あるいは脳梗塞などで、脳の前側にある前頭葉という部分を欠損した人たちは、人格的にメチャメチャになるということが分かりました。適応性がない、怒りっぽい、意欲がないなど、様々な欠陥が見られました。」

 

 

「その“人格がメチャメチャになる事象”の研究をバネとして、じゃあ前頭葉って、人格と深い関係があるんじゃないかと、前頭葉の研究が徐々に盛んになっていったのです。だから、私が聞いたこんな言葉があります。

 

『脳の研究は、1980年代は右か左かだったが、1990年代になったら前か後ろかになった。』

 

私の勤める大学の隣の研究室の先生は、脳科学の前頭葉の論文を沢山書かれている先生でしたが、その方が私に説明して下さった面白い言葉です。」

 

「こうして、前頭葉の研究が盛んになって、前頭葉の働きの特徴が明らかになってきました。それを読むと、1986年に書いた『モンテッソーリ教育を受けた子ども達の特徴』とぴったり一致するのですよ!」

 

既に1986年の著書に挙げられていた、”モンテッソーリ教育を受けた子どもたちの特徴”が、その後に明らかになった、“前頭葉の働きの特徴”と合致したのですね。

 

「興味を持った私は、私の勤めていた滋賀大学の同僚で、障害児教育の専門家の近藤文里先生に、“前頭葉の事を教えて頂けませんか?”と、お願いをしました。すると近藤先生は、自分のPCを持って私の研究室に来て、前頭葉の話を一杯して下さったのです。」

 

 

前頭葉の育ちを見極めるポイントとは

「脳の研究者から実際に前頭葉の話を聞いて、その中で非常に役に立ったことがあります。『前頭葉が育つ』と、断片的に様々に言われていますが、4つのポイントを外してはいけません。

 

『前頭葉が育っているかどうか』という4つのポイントは、

 

  1. 空間的な記憶 … 空間的な記憶は、あそこにあったとか、ここがこうなってる 等。
  2. 時間的な記憶 … いつあったとか、あの頃あったとか、何年前にあったとか、昨日だった等。
  3. その二つを統合して今目の前にある出来事に適応して、予想して、考えること。
  4. 実行に踏み出す!

実行まで行かないといけない。考えるだけじゃダメなんです。この4つが前頭葉の働きでね、この4つが揃わないと、前頭葉の働きと言い切れないのです“と。」

 

モンテッソーリで育った子ども達が、まさにその通りですね。考えるまで、言うまでは、他の子どももできますが、モンテッソーリで育った子どもは実行までするのですよね!

 

「私ね、この近藤先生の前頭葉の説明を聞いてから、手元にあった1000人の子どもたちのデータをこの4つの視点で分析しようと思いました。そうするとね、全部それが当てはまったのです!

 

 

モンテッソーリ教育を受けた子どもの例

【モンテッソーリ教育を受けた子どもたちの例】

・状況を判断し、臨機応変に対応する。

・計画性、目標をたてて、実行する。

・段取りがよく、見通しをたてて行動する。

 

(『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』より)

 

 

(ポートランドのモンテッソーリ小学生クラスの様子/自分たちで計画と目標を立てて生活する)

 

「全体が見えていて、そして、今何をしなければならないかが判断できるのです。他の人はね、思ってもしないのですよ。そこで“じゃあ私がします”となるようです。それでね、この視点で分析すると、モンテッソーリ教育を受けた子ども達は、前頭葉が育っているんです。

 

そして、他の共通性として、人を喜ばせるのが大好きです。だからお誕生会とかお別れ会とかね、きちっとするのよね。面白いですよね。それでね、大学生になっても宴会係になったりしていてね。」

 

私も、“モンテッソーリの保育園を卒園された子ども達は、企画が大好きになる”という話を聞いたことがあります。

 

 

 

感覚と運動と脳

「以前、養老孟司さんの講演を聞いた時に面白いなと思ったのが、黒板に何を書かれるかって楽しみにしていたらね、『運動』とたった一言書いただけ。」

 

 

 

「それはね、あの方は、“皆、脳だ、脳だって言うけど、脳の事ばっかり言っても何にもならない”って。そして、運動が大事だと仰いました。

 

『脳はキーボードもプリンターもないパソコンのようなもの。

 

  • 入力するキーボードに値する感覚器官(五感)
  • それを処理するパソコンの本体に匹敵する
  • それを出力するプリンターに匹敵する運動

 

 

この3つを考えないと、脳の事を話しても何にもならない』と。

 

これは、モンテッソーリが言ったことと同じですよね!

 

そして『運動が大事だ』と。

 

まさに、脳への入力(感覚器官)と脳からの出力(運動器官)を担う道具が、幼児期に出来上がるのです。そしてモンテッソーリ教育でそれができるのは、『五感を使う』『手を思い通りに使う』ことができるから。結果として、最初に挙げたような成長の共通項が見られるのです。

 

 

 

終わりに

最後に、相良先生の著書よりこんな引用をご紹介します。

 

 

人間形成の基礎・基本は、「感覚器官」と「脳」と「運動器官」が発育中の、幼児期にこそ形成されるのだということに注目すべきです。ですから、幼児期に基礎・基本とし徹底すべきことは、(中略)「感覚教育」(感覚の洗練)と「日常生活の練習」(筋肉運動の調整)なのです。(中略)

 

「筋肉運動の調整」の時期に、身体を使って覚えたことは、生涯ついてまわり、その人は、なにをするときにも段取りが分かり、順序立てて考えたり対処することができる人として、自分の人生を開いていくことができるのです

 

(「ママ、ひとりでするのを手伝ってね!」第7章 「日常生活を使う教育」 より)

 

 

 

※追記(7月3日)

このインタビューをしたのは、2017年2月の事です。そして、記事を掲載した直後の6月末に、相良敦子先生は、突然天国へと旅立たれました。それはあまりに急なことで、先生を愛する多くの人々が、悲しみに沈みました。

 

相良敦子先生は、愛に満ち、謙虚な姿勢を持ち、自分に厳しい方だったと思います。インタビューの際「体に悪いところ、何もないの。仕事が趣味なのよ!」と満面の笑みで語っていた相良先生。

 

先生は、天国に旅立たれる直前まで日本全国を飛び回り、モンテッソーリ教育の発展と日本の子ども達のために奔走されていました。

 

モンテッソーリ教育に生涯を捧げた相良先生に深い敬意を抱くと共に、心から哀悼の意を表します。

 

相良敦子先生、本当にありがとうございました。

 

イデーモンテッソーリ スタッフ一同

 

 

 

お知らせ

●相良先生の名著『ママ、ひとりでするのを手伝ってね!』がマンガとして再編され、発売されました。こちらの本の出版にあたり、イデー・モンテッソーリの編集長 あべようこが、マンガ(作画・作話)、コラムを手掛けております。是非ご覧下さい。

 

【出版社サイト】 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309248684/

 

 

●イデー・モンテッソーリでは、モンテッソーリ教員資格者の求人情報の案内も行なっております。資格をお持ちで仕事をお探しの方は、是非ご覧下さい。

 

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