2017.06.08 相良敦子先生インタビュー②
0-3歳の「秩序」の大切さ


幼児教育に長く関わっていらっしゃった相良敦子先生に、今、小さな子どもの子育て中のお父さんお母さんに「これだけは伝えたい」メッセージがあるか伺ってみました。

 

知性の土台として、秩序があるということです。」

 

知性というと「子どもに本を読んだり、数やひらがなの勉強をさせたりすること」とイメージしてしまいがちですが、具体的にはどんなことなのでしょう。

 

 

 

知性とは

相良敦子先生

「子どもはまず区別をします。そして区別して、同じもの同士を集めるとか、比べるとか、合わせるとかね。この子どもの行動の中に知性があります。

 

知性の働きとは、『区別する』こと。そして、区別して分けたものを『集める』『比べる』『合わせる』こと、です。」

 

– 確かに、子どもは同じ形を集めたり、並べたり、合わせたりすることが大好きです。でも何故そんなシンプルなことが、子どもの大事な知性の始まりなのでしょうか!?

 

相良敦子先生

「別の言い方をすると、『分類』・『集合』・『比較』・『対応』こそが知性です。その知性が、宇宙の果てまで知りたいエネルギー、知的な好奇心の原動力になっているのです。

 

だから、知性の働きが活動の中にあると、子どもの活動は自発的に続きます。これは生物学的なエネルギーとは違って、知的なエネルギーを使うのです。」

 

 

活動の持続性について

先生の著書『お母さんの「敏感期」』(ネスコ、1994年)の中にも、知性の特徴として『持続性』について書かれていらっしゃいます。

 

 

例えば粘土であれば、ただ単にこねくり回すだけではなく、そこに“色”を段階づけて分けたり、“形”で分けて合わせたりする要素を加えただけで、その子の活動は何か月も続いて発展したそうですね。

 

(粘土のイメージ)

 

クラスで先生たちが活動を用意する時にも、『分ける』『集める』『比べる』『合わせる』要素を少し盛り込むことで、子どもは、より夢中になって続けるかもしれません。

 

(「分ける」お仕事)

 

「クラスでは、例えば、ピンクタワーという大きさを『比べる』教具や、色板という色を『合わせる』教具など、知性の働きを織り込んだ活動がたくさんあります。そういった要素が、モンテッソーリ教育の教具には含まれています。

 

そして先生も、それらの教具の使い方を紹介する際、動きを一つずつ分析して順序立てて正確に見せるよう気を配っています。」

 

(上段:赤い棒は長さを「比べる」お仕事)

 

大人にとっては何の意味もないような事に子どもが夢中になっている時、子供は『知性を働かせている』のですね。

 

では、秩序とはどんなことでしょうか。

 

 

 

秩序とは

0-3歳の子どもが持つ、秩序への特別敏感な心(秩序の敏感期)

相良敦子先生

「これは、モンテッソーリ独自の発見です。他の幼児教育の理論では見た事がありません。そしてその秩序感が、やがて知性の働きに繋がって行きます。

 

子どもの中から出て来る秩序感を、大人がよく理解して対応することがとても大事です。

 

例えば、

・いつもある場所に置く、必ずあった所に戻す(場所)

・いつもの順序にする(順序)

・持ち主をはっきりさせる(所有物)

・いつものやり方で行う(習慣)

これらの事が次の3歳から6歳までの段階で、知性を働かせる土台になっています。」

 

ここで先生は、一人のお母さんの例をあげてくれました。

 

相良敦子先生

「教え子が母になり、子どもを産んだ最初の時からずーと私に手紙くれたんですよ。それでね、彼女は子どもが特に3歳までの間、『一日の流れの順序』をとても大事にしてあげたんです。朝起きて、顔洗って、ご飯食べて…ってね。

 

それと『場所』。これはここ、これはここ…を絶対に変えないで大事にしました。ちゃんと物の場所を決めてあげただけで、もうスタスタと片付けも何でもするのね。

 

それから『所有物』。これはママの物、これは○○ちゃんの物、とはっきりしてあげた。所有物がしっかりしている事で、皆に持ち物があると言うのがはっきり分かります。そうやって順序や場所、所有物が分かっているだけで、次に何をやるか自分で分かって動き出すというのです。」

 

– 子どもは、一日の流れが分かっていると安心するのですね。それは、家庭だけではなく、0-3歳のクラスの先生にもきっと大事なことですね。

 

 

3歳までの子育てに大切なのは「秩序」

相良敦子先生

「彼女が行ったのは、本当に賢い子育てだと思います。モンテッソーリが3歳の時点で人格ができるって言ってるけどね、秩序を大事にしてるだけで良いんです。」

 

素晴らしいお母様ですね。分かっていても実際にはなかなか実践できずに、つい大人の生活が優先になってしまったりします。それをきっちりやり切るのはやっぱり凄いことだと思います。

 

ちなみにそのお子様は、今では成人して、素敵な大人になってお仕事でも活躍されているそうです。

 

相良敦子先生

「最後に『秩序感』とは、生まれて間もない小さな子どもが自分の周りの環境を理解するための羅針盤のようなものです。自分の位置を知ろうとしている時に、周りの場所・順序・所有物などがいつも同じであることが、とても大切なことなのです。」

 

日々の秩序を大事にすることで、子どもが安心して自由に動くことができるようになり、それが、自発的に知性を働かせていく土台となるのですね。

 

 

 

 

【秩序と知性 まとめ】

・秩序感は、3歳頃まで特に強く、周囲の状況を把握する羅針盤のような役割を果たす。

・鋭い秩序感はやがて、知性の働きと重なり、その土台となる。

・知性は、自発的な活動の原動力。

 

 

 

お知らせ

●相良先生の名著『ママ、ひとりでするのを手伝ってね!』がマンガとして再編され、発売されました。こちらの本の出版にあたり、イデー・モンテッソーリの編集長 あべようこが、マンガ(作画・作話)、コラムを手掛けております。是非ご覧下さい。

 

【出版社サイト】 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309248684/

 

【amazonでのご購入ページ】 https://amzn.to/32JDF1O

 

 

 

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