2023.11.10 「モンテッソーリ エレメンタリーガイド」のキャリアインタビュー#2  大谷育美さん


 

 

エレメンタリーガイド(小学校教師)のキャリアや、仕事としての魅力、そして資格取得の道のりなどをお伝えするキャリアインタビューをお届けします。

 

第二弾は、福岡県北九州市でモンテッソーリ保育園を運営され、2024年にモンテッソーリ小学校を開設準備中の大谷育美さんへのインタビューです。(同僚の大瀬さんへのインタビュー記事も合わせてご覧ください)

 

日本の高校で先生をされていたところから、モンテッソーリ教師になったきっかけや、エレメンタリーの学びの魅力についてお聞きしました。

 

(取材・文 イデー・モンテッソーリ ライター 松尾)

 

大谷育美さんプロフィール

大谷育美さん

 

NPO法人Scuoka dei Bambini代表理事。合同会社カーサ・デ・バンビーニ代表。

 

2017年、福岡県北九州市にて認可外保育施設である「英語モンテッソーリ園カーサ・デ・バンビーニ」を開業。2019年に企業主導型保育事業「RIVERWALKこどもの家」を開園。両園で0〜6歳までのモンテッソーリ保育環境を提供する。

 

そして今、6歳以降のモンテッソーリ教育継続のための小学校、モンテッソーリエレメンタリースクール北九州(通称MEK)を設立中。2024年1月開校予定。

 

AMIモンテッソーリ教員免許(0-3, 6-12)、JAM(3-6)教員免許をもつ。家族はオランダ在住で、小学生の娘はオランダのAMI認定小学校カーサ・スクールに通っている。

 

モンテッソーリ教育との出会い

– 大谷さんは、元々高校の英語の先生でいらっしゃったのですね。モンテッソーリ教育との出会いはどういったものだったのでしょうか。

 

10年間ほど、通信制高校の英語の教師として働いていました。

 

それ自体は非常にやりがいがあったのですが、高校生の先生をやっていると進路を決めていく相談に乗るんですよね。

 

自分で選択をするという経験が少ないからか、そこですごく戸惑う子が多いなと感じていました。本人が選んで掴んでいくというよりは、周囲の大人によって決められてしまうようなケースも多くて、本当にこれでいいのかなという思いはありました。

 

(写真提供:大谷さん / 高校教師時代・右端)

 

そこから自分でも課題感を持って色々勉強し始めた中で、やはり幼児期が大事だなと考えるようになって、モンテッソーリ教育に出会いました。

 

そこで、モンテッソーリの本をたくさん読んだあと、モンテッソーリのアプローチを、当時の高校生の生徒に実践してみたんです。教具の提示とかではなく、「秩序感」や「自由と規律」などの基本的なことですね。

 

自己選択をしてもらいながら授業を進めていく、というスタイルに変えてみたりしました。そしたら生徒たちの変化がものすごかったんです!出席率も100%になったり、子どもたちの目もキラキラ輝くようになりました。

 

子どもたちが自分の人生を生き始めたんだと感じましたし、モンテッソーリの思想は間違いないなと心から実感しました。

 

高校生でこれだけ変化があるのだから、3,4歳から始めたら更に大きな影響があるだろうなと、そこでモンテッソーリ教師になることを決めました。

 

– 実践の場でモンテッソーリ教育の素晴らしさを実感されたのですね。そのあと資格を取得されたのですか?

 

はい。その後、日本で3-6の資格を取りにいきました。同時に保育士の資格も取得して、2017年に北九州に保育園(※)を開設しました。

 

※バイリンガルモンテッソーリ園「カーサ・デ・バンビーニ」 https://casadeibambini.jp/ 

 

(写真提供:大谷さん / カーサ・デ・バンビーニ)

 

今は保育園は、0歳児から受け入れていて、6歳までの園児がいます。

 

(写真提供:大谷さん / カーサ・デ・バンビーニ室内)

 

モンテッソーリ小学校設立への想い

– なるほど、そこから小学校設立に向けて始動されたのはどういうきっかけがあったのですか?

 

幼児期からモンテッソーリで育ってきた子どもたちに、その後も一貫したモンテッソーリ教育を提供してあげたいな、卒業生たちの進級先の一つの選択肢として用意してあげたいなという思いがありました。

 

また、自分の娘が一学期だけ地元の小学校に通ったのですが、わかってはいたものの、その体験にがっかりしたという経験もありました。一番ショックだったのは、明確に子どもに「バツ」をつける教育ですね。

 

モンテッソーリでは「バツ」をつけてエラーを修正する、という教育はしないんです。

 

でも日本の小学校だと、「とめはね」などの文字の書き方一つでバツをもらって帰ってきます。それで直して再提出しても、更に青色でバツが加えられて返ってくることもあります。

 

もちろん「とめはね」などの細かさが大事なのもわかるのですが、小学一年生に繰り返しバツをつけることがよいのだろうか、というのは疑問がありましたし、なにより「大人が子どもを評価する」という姿勢が自分とは合わないなと思いました。

 

小学校の先生は一生懸命やっていらっしゃるので、責めるとか間違えていると申し上げるつもりはなくて、あくまでも視点や思想の違いがあるなということですね。

 

そういった現状を目の当たりにして、一つの選択肢として、モンテッソーリの小学校を作りたいなと思いました。

 

家族が住んでいるオランダだと、非常に教育の選択肢が多様なんですよ。モンテッソーリ、シュタイナー、ドルトン、イエナプラン、森の学校、などなど。色々なメソッド、色々な理念の学校があります。合わなかったら次の学校に、というのも当たり前にあって、子どもたちが学ぶ権利が保証されているんです。

 

(写真提供:大谷さん / オランダの小学校の授業風景)

 

今の日本には「文部科学省の学習指導要領に沿った学校」というほとんど1種類の選択肢しかない状態なので、私たちが選択肢を増やして、自分に合う場所、学びやすい場所を子どもが見つけられる社会にしたいなと思っています。

 

エレメンタリー教師資格トレーニングの様子

– その想いから、オランダでエレメンタリーの資格を取得されたのですね。留学中のお話もぜひお聞かせください。

 

家族が先にオランダのデルフトにいたので、生活面での苦労はなかったのですが、印象に残っていることとしては、とにかくコースの勉強が楽しかったことです。

 

自分は先にモンテッソーリ教師(3‐6歳レベル)の経験があったというのもあるのですが、3-6でお馴染みのピンクタワーや二項式が、別の形で再登場するということとかが、驚きと感動の連続でしたね。

 

これまでやってきたことが、もう全部繋がるんです。伏線が回収されるみたいな感じですね。改めてモンテッソーリは本当に一貫した教育思想なんだなと感じました。

 

(写真提供:大谷さん / 留学中の授業風景)

 

また、宇宙のはじまりから世界の成り立ちを探究していくので、トレーニングを終えたあと、世界の見え方が変わるというか、私自身が生まれ変わったようにも感じていました。

 

本当に人生が変わる学びだったので、これはぜひ皆さんにも体験してもらいたいなと思います。

 

(写真提供:大谷さん / 留学中の授業風景)

 

– 幅広い年齢層で資格を取得されている大谷さんにお聞きします。3-6歳レベルの資格を取得するか、6-12歳レベルの資格を取得するか、で迷われる方も多いのですが、どういった方が6-12の資格に向いているとお考えですか?

 

そうですね、「知識とか言葉で物事を説明することが好きな人」は、エレメンタリーガイドにとても向いていると思いますね。

 

あとは、「宇宙が生まれてから今まで」のような壮大なスケールの話が好きな人とか、どんどん自分で調べていくことが好きな人は、6-12の資格が向いているイメージがあります。

 

 

(写真提供:大谷さん / グレートストーリーの様子)

 

留学中にエレメンタリーの勉強をしているときは、世界の捉え方が変わるので、本当に毎日が新しい発見だと感じていました。そのように新たなことを楽しんで学べる人にはぜひおすすめしたいと思います。

 

– 本日はありがとうございました。

 

編集後記

大谷さんは2023年10月現在、北九州市に新たなモンテッソーリ小学校の開設に向けて活動中です。

スクールの説明会やトライアルも実施されています。

 

詳細はこちらをご確認ください。 https://scuoladeibambini.jp/

 

また、共同で小学校を設立される大瀬さんのインタビューもさせていただき、ご自身のキャリアや、設立中の小学校についてお話を伺いました。

 

併せてご覧ください。

 

お知らせ

 

モンテッソーリ教育 のエレメンタリー教師資格をお持ちの先生いませんか?

 

エレメンタリーガイドの輪」は、エレメンタリーの先生同士の交流、研究の場です。

 

会員同士で英語の提供の翻訳をしたり、日本向けの教材を作ったりしています。

 

実は資格を持っているけど、周りに協力し合える先生がいないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

皆様と共に、日本の6歳~12歳のモンテッソーリ小学校課程をより盛り上げていく一歩を踏み出せれば幸いです。

 

よろしければご登録ください。

https://montessorielementaryjapan.jimdosite.com/


インタビュー

   

PAGETOP