2024.01.18 「モンテッソーリ エレメンタリーガイド」のキャリアインタビュー#4 白川  慶さん


 

エレメンタリーガイド(小学校教師)のキャリアや、仕事としての魅力、そして資格取得の道のりなどをお伝えするキャリアインタビューをお届けします。

 

第4弾は、東京にあるインターナショナルのモンテッソーリ小学校でエレメンタリーガイドをされている白川 慶さんへのインタビューです。

 

エレメンタリーの資格取得までの道のりや、モンテッソーリ小学校でのこどもたちの印象的なエピソードをもとに、エレメンタリーガイドの魅力についてお聞きしました。

 

(取材・文 idees montessori事務局:松尾)

 

白川 慶さんプロフィール

白川 慶さん

 

東京在住のエレメンタリー教師。日本で3-6歳のAMIの資格を取り、幼稚園に勤務。そののち、AMIの世界大会を機に6-12歳の教育に興味を持ち、資格取得のためにオレゴン州ポートランドに留学。現在は東京にあるインターナショナルスクール The Montessori School of Tokyo にて、小学校低学年のクラスを担当している。

 

自分にはエレメンタリーが向いているかも

– モンテッソーリのエレメンタリーの資格取得をされるまでのご経歴を教えてください。

 

白川 慶さん(以後白川さん):

私は、日本でAMIの3-6歳の資格を取得したあと、モンテッソーリを部分的に取り入れた幼稚園で働いていました。

 

そして2013年の夏休みに「International Montessori Congress」という世界大会がアメリカのポートランドで開催されたので、それに参加しました。このイベントには、広場で公開クラスを見る機会がありました。

 

(International Montessori Congressの様子 提供:白川さん)

 

そこでエレメンタリーのクラスを直接見たことが転機となり、エレメンタリーの資格取得に向けて動き出しました。数年かけて準備をした後、2016年から語学留学、2017年からエレメンタリーコースの留学を経て、2018年に帰国しました。

 

– Congressで実際にエレメンタリーの様子を目の当たりにしたことがきっかけだったのですね。具体的にはどのように影響を受けられたのですか。

 

白川さん:

実際の子どもたちの活動や教具を間近で見ることができて、すごく自分自身の興味を惹かれたということがありました。3-6歳の勉強をしていたときにも、その先にエレメンタリーの世界があるとは知っていたのですが、実際に目の当たりにして「3-6歳でやっていることが、エレメンタリーの段階で発展して繋がっていくのだな」と思い、とても魅力を感じました。

 

また、自分自身の興味や指向性が、よりエレメンタリーに向いているのではと感じました。幼児クラスには無い教具を見たり、鉱石や化石などの本物が置いてあったりするのを見て「これをどうやって子どもに紹介するのだろうか」という興味がぐっと湧きました。

 

そしてなんとなく「もしかしたら自分にはエレメンタリーが向いているかも」と思いました。

 

もともとの英語力は全然高くありませんでした

– なるほど、Congress見学の影響から留学準備に入られたのですね。留学の準備期間に具体的にどんなことをされていたのか、伺えますでしょうか。

 

白川さん:

アメリカのトレーニングセンターは、TOEFLで大学院入学レベルの点数を取ることを求められました。にも関わらず、もともとの英語力は全然高くありませんでしたので、地道に必死に勉強する必要がありました。

 

日本にいる間も仕事をしながら英語はコツコツ勉強しつつ、2016年の9月からアメリカで語学留学を開始しました。語学留学の期間は半年程度で、そこで必死に英語力を伸ばしてから2017年のエレメンタリーのコースに入学しました。

 

振り返ってみると自分でもよくやったな、と思います(笑)

 

語学の勉強は、とても大変ではあったのですが、Montessori Congressで実際にエレメンタリーの様子を見たことが原動力になって頑張れたのかもしれません。百聞は一見にしかずと言いますが、留学を迷われている方はCongressなどのイベントに見に行ってみるといいかもしれません。

 

コース中は仲間と先生に本当に助けられました

– 「しんどかった」と仰る方が多いのですが、白川さんのエレメンタリーコースの留学中の生活は、いかがでしたか。

 

白川さん:

まず、私の通ったポートランドのコースには20人くらいの同期の受講生がいました。8割はアメリカの方で、男性の方は4,5名という内訳ですね。男性の割合は、もちろん多くはないですが、3-6歳のコースよりは多いと思います。

 

勉強はハードで、日々睡眠不足でしたが、コース中の仲間と先生には本当に助けられました。

 

ノートをお互いに送り合ったり、みんなが「自分がクラスに貢献できることはなんだろう」と考えて助け合っていた記憶があります。

 

(トレーニングセンターの写真 提供:白川さん)

 

モンテッソーリのカリキュラムの美しさを感じさせる「The Chart of Interdependencies」

– 留学中のコースについて、印象的だったことを教えてください。

 

コースの最後の方にあった「The Chart of Interdependencies」という提供が印象に残っています。

 

(The Chart of Interdependencies      出典:web

 

これはモンテッソーリ教育のbiology(生物)とかgeography(地理)の概念などを全て統合したようなチャートで、宇宙のすべてのものが互いにつながり、依存しているという概念を子どもに紹介するものです。

 

トレーナーの説明は、地球と太陽の関係とか、水がどういう風に動いてるのかとか、そういった「自然」の話から始まり、次に、自然の摂理において動物や植物などが、どう依存関係にあるのかという話に展開します。

 

そして人間の話になるのですが、「supranatura」([※筆者注]適切な日本語訳がないが、訳すとすると「超自然」)という概念が出てきます。チャートの中央の銀色の円ですね。簡単に言うと「人間は活動やシステムに自然のリソースを取り込んで、独自の文化を作っているよね」という説明なのですが、そこには「人間は環境を破壊して悪い存在だよね」というニュアンスはなく、「良い方向にも悪い方向にも環境を変えていくのが人間の仕事である」という中立的な見方を提示されました。

 

このトレーナーの話が非常に印象に残っていて、「このような見方で子どもに環境教育ができたら、子どもの考え方もこれまでとは変わっていくだろうな」と感じました。

 

また、このチャートは、「宇宙の創造の話」から始まるトレーニングの最後のまとめとして、ものすごい綺麗にまとまってるプレゼンテーションなのですよね。

 

前にトレーナーが言っていたことや各チャプターが繋がって、聞いている側としても、「あ、結局そういうことだったのか」と腹落ちするという、モンテッソーリのカリキュラム自体の美しさを感じさせるもので、すごく好きですね。

 

渡した鍵をうまく使って、子どもの中で面白い学びが起きている

– 現在、日本でモンテッソーリの小学校教師として働かれているわけですが、働く中でのやりがい、魅力について感じられていることを教えてください。

 

白川さん:

子どもたちはユニークに、それぞれが興味のあることを調べていきます。それ自体から私自身が学ぶこともあって面白いのですが、特に、ふとしたきっかけを提供できたところから、探求や創作に繋がっていったりすると、よかったなあと思いますね。

 

例えば、この前クラスの子どもが、タコの絵が描かれたTシャツを着てたんですね。それで「どこで買ったのー?」などざっくばらんに話していたのですが、「タコについて調べてみたら?」とさらっと言ってみたら、そこからすごい大きなリサーチに繋がっていったりということがありました。

 

(リサーチの様子 提供:The Montessori School of Tokyo)

 

よく、モンテッソーリ教師の仕事は「ドアを開けるための鍵を提供することだ」と言われるんですね。

 

教師は、子どもが知りたいことを直接教えるのではなく、子どもが自ら知りたいことにたどり着くための「鍵」を提供する、そういう考えを持っています。

 

なので、教師は全てを知っている必要はなくて、なにか面白い学びに繋がりそうなエッセンスだけを提示したり、自ら学ぶ方法をレクチャーしたりということを心がけています。

 

むしろ教師が全部知ってしまっていたら、子どもたちの探求に対しても「うんうん、知ってる知ってる」となってしまって子どもたちも楽しめないですよね。

 

こちらが渡した鍵をうまく使って、子どもの中で面白い学びが起きていたり、というのを見ているのが本当に楽しいですね。

 

(校長先生の身長はどのくらいなのかを知りたい子どもたちによる測る活動 提供:The Montessori School of Tokyo)

 

– 白川さんがどんなところにやりがいを感じられているのか、とてもよく伝わってきました。他にも子どもと接するなかでの面白さ、楽しさはありますか?

 

あとは、子どもの持っているクリエイティブな部分が出てくるのを見るのもとても楽しいですね。

 

印象的だったのは、ギリシャ神話の劇を自分なりにアレンジして、半年くらいかけて準備をして劇をつくる子どもがいたことですね。

 

本人も色々考えながら創作したりとか、友達とうまくいかないことがあったりとか、色々きつい経験もしていました。

 

でもその経験から「次はどうしたらいいだろうか」と考えることが人間の本質的な学びだと思うし、それをサポートできる立場にいるのは本当に恵まれているなと感じています。

 

(縄文時代にどんぐりクッキーを食べていたと知り、どんぐりを自然にあるものだけを使って粉にできるのか実験する子どもたち 提供:The Montessori School of Tokyo)

 

 

教材作りの時の勉強も楽しい

– 先ほど、ご自身は幼児クラスよりもエレメンタリーの方が向いているかも、と仰っていましたが、白川さんから見て、エレメンタリーに向いている人はどんな方ですか。

 

白川さん:

ある一面にオタク的なことがある人、自分の好きなことがはっきりしている人、ものごとを探究することを楽しめる人、はとても向いているのでは、と個人的には感じています。

 

というのも、資格を取ってからも勉強する量はとても多いのですよね。

 

現時点では、モンテッソーリの小学校教育を日本でやろうと思っても、例えば「日本の歴史年表」のような教材はほとんど存在しませんし、「日本の文化」をどう教えるかといったときに参考にできるものも無い状態です。アメリカで資格を取ったのでアメリカの年表はありますが、日本の子どもに自分の国のことを知ってほしいなと思っても、まずは教師が教材から作っていかないといけないという段階です。

 

この「日本の歴史年表」も、それぞれの絵や説明を完成させるにはかなりの時間が必要でした。

 

(安倍陽子さん、福澤眞紀子さんと一緒に制作した日本の歴史年表 提供:白川さん)

 

教材を作るにあたっては、自分自身もしっかり学んでおかないといけないし「子どもに変なバイアスを持たせないようにニュートラルに伝えよう」と考えていると、結構下調べが多くなりますが、このプロセスを探究として楽しんでやれる方は、エレメンタリーの教師に向いているのかなと思います。

 

– ありがとうございます。ものごとを探究することが好きな方はきっと読者さんの中にもいるので、背中を押して頂いたと思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

お知らせ

 

モンテッソーリ教育 のエレメンタリー教師資格をお持ちの先生いませんか?

 

エレメンタリーガイドの輪」は、エレメンタリーの先生同士の交流、研究の場です。

 

会員同士で英語の提供の翻訳をしたり、日本向けの教材を作ったりしています。

 

実は資格を持っているけど、周りに協力し合える先生がいないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

皆様と共に、日本の6歳~12歳のモンテッソーリ小学校課程をより盛り上げていく一歩を踏み出せれば幸いです。

 

よろしければご登録ください。

https://montessorielementaryjapan.jimdosite.com/


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