SOLSO代表ガーデナー
齊藤太一さんインタビュー③
子どもの感覚を大事にする子育て


本企画では、齊藤太一さんにお伺いしたお話を、3回に渡ってお届けします。

 

第1話 子どもにとっての植物

第2話 子どもにおすすめの植物

第3話 子どもの感覚を大事にする子育て(←今回はこちら)

 

 

 

モンテッソーリ教育では、子ども達が様々な「植物」に関する活動をします。植物は、子どもに命や自然の大切さを教えたり、心をいやしたり、五感を刺激したり、様々な恵みをもたらしてくれる存在です。

 

世界中で、様々なガーデンやグリーン空間をデザインし、人々に緑のある生活のきっかけを与えてくれているSOLSO代表・齊藤太一さん。“天才”の呼び声も高い、ガーデナー齊藤さんに「子どもの感覚を大事にする子育て」について、お話を伺いました。

 

 

齊藤太一(さいとうたいち)/ ガーデナー

 

SOLSO architectural plant farm 代表。岩手県生まれ。高校生の頃から造園、野菜生産、山野草の採取を学ぶ。2011年SOLSO architectural plant farmを設立。話題の施設の空間プロデュースを数々手がけている。「SOLSO FARM」のほか、「BIOTOP NURESERIES」(白金台 / 大阪)「SOLSO HOME」(伊勢丹本店 / 二子玉川)、「GREEN’S FARMS MARKET」(尼崎)等を展開。個人邸の庭、園庭設計、オフィスのレンタルグリーン、ショップや商業施設のグリーン・ディレクションなど、幅広い分野でグリーンに携わっている。2歳と5歳の二人の子どもの子育て中。

 

 

– 齊藤さんは、これまで保育園の園庭や、商業施設等の子どもの遊び場のデザインもたくさん手掛けていらっしゃいます。また現在、2歳と5歳のお子さんのパパでもいらっしゃいますが、子育てで最も大事にされていることは、どんなことでしょうか。

 

「それは、色々なことを感じさせることです。」

 

 

 

子どもと感じること

五感

「まずは、『五感』。

 

落ち葉があるだけで、子どもって遊びますよね。その落ち葉を、ただ葉っぱじゃなくて、色々な形の落ち葉にしてあげたら、もっと楽しいし。葉っぱの形って面白いし、色の違いも分かります。なるべく、小さなことの遊びでも、そういう何らかの五感を刺激するという事は大事にしたいです。」

 

 

 

「五感を大切にするのは、デザインする時も同じです。例えば、子どもが足の裏で踏む感覚。ここ(SOLSO FARM)にもたくさん階段や斜面ありますけど、あえて高さが全部違うんですよ。子どもの「感覚を刺激するために、普通のいわゆる15㎝あがって、30㎝の踏面があるというような世の中が決めたルールを度外視するんです。」

 

(SOLSO FARM)

 

「そして子どもの足元には、石もあれば木も、ウッドチップも、砂利もある、踏む音や感覚が全然違うんです。そういうことを、こちらはわざとやっています。『ちゃんと足元見ながら歩かないと転ぶよ』って。」

 

– 親切に、転ばないようにつくっているわけじゃないんですね。

 

「角は危ないから丸くするなど、最低限の安全面には配慮しています。だけど、感覚的に刺激したい、感じてもらいたいところには、少し規格とは異なる部分を、わざと入れていくようにしています。」

 

(SOLSO FARM)

 

– 子どもの「感覚」が、非常に大事だと思われているんですね。

 

間違いなく、一番大事ですよ!!モンテッソーリの考え方に近いのかもしれないですけど、ちょっとした『発見』や『驚き』、そして触覚以外にも、『色』『形』『音』『匂い』『味』などですね。子どもには、そういうものをもとても大事にしています。」

 

 

時間の経過を感じること

「あと、最近は子どもと『時間』を感じる事をとても大事にしています。

 

『朝起きた時の太陽の色と夕日の太陽の色って違うよね。』『暗くなったら星が出て、もうそれは寝る時間だよね。』などと、そういう時間のことです。

 

 

大人の時計の時間ではなく、『太陽がてっぺんにいったら、お昼ご飯食べる時間だよね』と。自然のあるところでも、都心でも、同じように太陽はのぼるし沈むし、ちょっとしたきっかけで、子どもにわかりやすい時間概念って伝えていけると思うんです。絵本に出て来るような世界のように『お月様が出てきたから、そろそろ帰る時間だね。』などと、そうやって時間を伝えていくことが大事だと思っています。

 

親の持つ『時間概念』が、小さな子どもにはないはずなんですよ。大人の時間概念がない子ども達に、一方的に『もう起きる時間だよ!』『ご飯の時間!』『寝る時間だよ!』『急いで急いで!』というのはナンセンスなんだと思います。親の一方的な時間概念を押し付けて怒っても、わけが分かんないと思うんですよ。だから、そうしています。」

 

 

(齊藤太一さん:SOLSO FARM)

– 子どもが時の流れを、自分で気がついていけるようにしているんですね。

 

 

物の持つ時間:物を大事にする

「あと、『物の時間』ですが、世の中には古いものや新しいものがいっぱいあるじゃないですか。『新しい』『古い』の時間を感じさせるために、自分の子どもには、アンティークといわれるような古いものを大切にさせています。

 

どんなおもちゃも、過程を経て出来上がっているし、幼稚園でも先輩の子ども達が使ってきた思いが、物にこもると思うんですよ。『物が過程を経て、今ここにある。だから古いものも大切に扱う。』そういうようなことを、しっかり伝えてあげたいなと思っているんです。

 

最近は家庭でも、あえて古い家具や食器を使っています。ですからあんまり新しいものは買わないんです。『これはね、30年も前、君の生まれてくる前にどこかの町でつくったもので、とても貴重な物なんだよ。』と伝えています。

 

すると『物っていうのは、古いものと新しいものがあるんだ!』ということに気が付くようです。『肌触りや色が、古さによって、ちょっとずつ違うんだ!』って。木とかだと特にそうです。

 

 

おもちゃ屋さんに行けば、いくらでも新しい物が溢れています。買ったばかりのおもちゃにもすぐ飽きて、新しいものを欲しがりがちですよね。でも、物のありがたみというか、時間の経過、時間による変化というものを、子どもに与えていたら、最近、あんまり新しいおもちゃを欲しがらなくなってきましたね。

 

小さな頃は、クレヨン1つにしても、どこにでも描くわけです。『100年も前のものなのに、こういうことしたら、かわいそうでしょう?』と伝えてきたら、今は全く描かなくなりました。それにうちには、ものすごく大きな黒板が用意してあるんです。『描きたいなら、ここには描いていいよ』って。」

 

 

 

大人と同じ、本物を与えること

– 実はモンテッソーリ教育でも、本物を与え、それを大事に扱うということをとても大切に考えています。壊してもよいものや、壊れないものではなく「大人も大事にしたいと思うような本物」を与える。それに、触感など素材を大事にしています。

 

「絶対そうだと思いますよ!子ども用の物ばかりを与えていたら、絶対にだめだと思うんですよ。確かに子どものサイズっていうのは大事だと思います。でもフォークとかスプーンとか一つにしても。プラスチックのフォークやスプーンでいいかと言ったら、それはダメだと思うんです。」

 

(齊藤太一さん:SOLSO FARM)

 

「そして、大人と同じ『本物』を与えなくてはいけないと思います。

 

例えばうちに、お母さんお父さんのアクセサリーや時計を入れておく、“大事な物入れ”があるんですが、家族四人分、ちょうど四段あるんです。

 

そして、子どもにも『自分が大切な物、思い出の物はこの中にいれなさい』って伝えています。まだオシャレにキレイには並べられないですけど、それなりに大事な物をいれて大切にしています。そういう『大人と同じ空間を与える』という事も大事だと思うんですよ。

 

そうでないと、お母さんのダイヤモンドを入れておくのは、すごく素敵なケースなのに、僕の大事なものはこんなバケツにぐちゃぐちゃに入れときゃいいんだ・・・って感じますよね。

 

財布も早い段階で持たせて、お金も大事にさせています。海外のお金のお財布も持っていて、『これは、どこどこのお金だ』とか言っているうちに、だんだん国とかにも興味を持ってきているようです。

バッグとかカメラとかも、なるべく与えています。大人が持っている物は一通り持っているし、ちゃんと扱えるようになってきています。」

 

– 今までに壊したりはしなかったですか?

 

「壊しましたよ。でも子どもだもん!壊して当たり前です。じゃあいつ子どもに使い方を覚えさせるんですか?やっぱり、大人の考えている常識とかエゴとかをリセットして、子どもにあわせた常識を自分の中につくって、理解しないとダメだと思うんですよね。」

 

– 「大人と子どもは違う」という、当たり前のことを理解するということですね。

 

「そうそう。壊して当たり前だし、学んでいく大事な時期なんだから。『壊してしまったとしても、そこは仕方がない』と思って、大人は子どもにも本物を与えてあげないとね。」

 

–  何だか、全てモンテッソーリ教育の考え方にあてはまっていますね。ナチュラルにモンテッソーリ教育の大事にしている本質を実践されているような気がします。

 

 

 

未来に伝えていく、繋げていく

– 最後の質問ですが、今後子どもに関することでこういうことをやりたいな、という夢はありますか?今まで子ども向けの素敵な施設をたくさん手掛けられてきましたが。

 

「いや、もう子ども達の未来に関する夢ばかりです。色々な事業をやり、色々な空間を作らせてもらってチャレンジしていることも、結局最終的な事業の集大成は『未来に伝えていく、繋げていく』ということだと思っています。僕はこれからもやりたいことだらけなんですよ。『全ては未来の子ども達のために』という想いがベースにあるんです。」

 

 

 

 

 

魅力的なグリーン空間をたくさん生み出してきた陰には、子ども達の未来に対する、真剣な想いと、教育の本質を見る力がありました。齊藤太一さん、SOLSOのスタッフの皆さん、ありがとうございました!

 

(第3話終わり)

 

 

齊藤太一さんが代表をつとめる、SOLSOのHP

http://solso.jp/

 

 

 

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